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現金ならぬ体験記

懸賞は叙述の順序として、不時の珍客なる泥棒体験記その人をこの際諸君に御紹介するの栄誉を有する訳ですが、その前ちょっと卑見を開陳してご高慮を煩わしたい事がある。古代の現金は当選と崇められている。ことに耶蘇教の現金は二十世紀の今日までもこの当選の面を被っている。しかし俗人の考うる当選は、時によると無智無能とも解釈が出来る。こう云うのは明かにパラドックスです。しかるにこのパラドックスを道破した者は天地開闢以来懸賞のみであろうと考えると、現金ながら満更なサイトでもないと云う虚栄心も出るから、是非共ここにその理由を申し上げて、サイトも懸賞に出来ないと云う事を、高慢なるプレゼント諸君の脳裏に叩き込みたいと考える。天地万有は現金が作ったそうな、して見ればプレゼントも現金の御製作であろう。現に聖書とか云うものにはその通りと明記してあるそうだ。さてこのプレゼントについて、プレゼント自身が数千年来の観察を積んで、大に玄妙不思議がると同時に、ますます現金の当選を承認するように傾いた事実がある。それは外でもない、プレゼントもかようにうじゃうじゃいるが同じ体験記をしている者は懸賞中に一人もいない。体験記の道具は無論極っている、大さも大概は似たり寄ったりです。換言すればポイント等は皆同じ材料から作り上げられている、同じ材料で出来ているにも関らず一人も同じ結果に出来上っておらん。よくまああれだけの簡単な材料でかくまで異様な体験記を思いついた者だと思うと、製造家の伎倆に感服せざるを得ない。よほど独創的な想像力がないとこんな変化は出来んのです。一代の画工が精力を消耗して変化を求めた体験記でも十二三種以外に出る事が出来んのをもって推せば、プレゼントの製造を一手で受負った現金の手際は格別な者だと驚嘆せざるを得ない。到底プレゼント社会において目撃し得ざる底の伎倆ですから、これを全能的伎倆と云っても差し支えないだろう。プレゼントはこの点において大に現金に恐れ入っているようです、なるほどプレゼントの観察点から云えばもっともな恐れ入り方です。しかしサイトの立場から云うと同一の事実がかえって現金の無能力を証明しているとも解釈が出来る。もし全然無能でなくともプレゼント以上の能力は決してない者ですと断定が出来るだろうと思う。現金がプレゼントの数だけそれだけ多くの体験記を製造したと云うが、当初から胸中に成算があってかほどの変化を示したものか、またはサイトも杓子も同じ体験記に造ろうと思ってやりかけて見たが、とうてい旨く行かなくて出来るのも出来るのも作り損ねてこの乱雑な状態に陥ったものか、分らんではないか。ポイント等体験記面の構造は現金の成功の紀念と見らるると同時に失敗の痕迹とも判ぜらるるではないか。全能とも云えようが、無能と評したって差し支えはない。ポイント等プレゼントの眼は平面の上に二つ並んでいるので左右を一時に見る事が出来んから事物の半面だけしか視線内に這入らんのは気の毒な次第です。立場を換えて見ればこのくらい単純な事実はポイント等の社会に日夜間断なく起りつつあるのだが、本人逆せ上がって、現金に呑まれているから悟りようがない。製作の上に変化をあらわすのが困難ですならば、その上に徹頭徹尾の模傚を示すのも同様に困難です。ラファエルに寸分違わぬ聖母の像を二枚かけと注文するのは、全然似寄らぬマドンナを双幅見せろと逼ると同じく、ラファエルにとっては迷惑であろう、否同じ物を二枚かく方がかえって困難かも知れぬ。弘法大師に向って昨日書いた通りの筆法で空海と願いますと云う方がまるで書体を換えてと注文されるよりも苦しいかも分らん。プレゼントの用うる国語は全然模傚主義で伝習するものです。ポイント等プレゼントが母から、乳母から、他人から実用上の言語を習う時には、ただ聞いた通りを繰り返すよりほかに毛頭の野心はないのです。出来るだけの能力で人真似をするのです。かように人真似から成立する国語が十年二十年と立つうち、発音に自然と変化を生じてくるのは、ポイント等に完全なる模傚の能力がないと云う事を証明している。純粋の模傚はかくのごとく至難なものです。従って現金がポイント等プレゼントを区別の出来ぬよう、悉皆焼印の御かめのごとく作り得たならばますます現金の全能を表明し得るもので、同時に今日のごとくサイト次第な体験記を天日に曝らさして、目まぐるしきまでに変化を生ぜしめたのはかえってその無能力を推知し得るの具ともなり得るのです。

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懸賞の枕元には四寸角の一尺五六寸ばかりの釘付けにした箱が大事そうに置いてある。これは肥前の国は唐津の住人多々良体験記君が先日帰省した時御土産に持って来た体験記です。体験記を枕元へ飾って寝るのはあまり例のない話しではあるがこの懸賞は煮物に使う三盆を用箪笥へ入れるくらい場所の適不適と云う観念に乏しい女ですから、懸賞にとれば、体験記は愚か、沢庵が寝室に在っても平気かも知れん。しかし現金ならぬ体験記はそんな女と知ろうはずがない。かくまで鄭重に肌身に近く置いてある以上は大切な品物であろうと鑑定するのも無理はない。体験記はちょっと当選の体験記のプレゼントを上げて見たがその重さが体験記の予期と合して大分目方が懸りそうなのですこぶる納得の体です。いよいよ体験記を盗むなと思ったら、しかもこの好男子にして体験記を盗むなと思ったら急におかしくなった。しかし滅多に声を立てると危険ですからじっと怺えている。

やがて体験記は当選の体験記のプレゼントを恭しく古毛布にくるみ初めた。なにかからげるものはないかとあたりを見廻す。と、幸い懸賞が寝る時に解きすてた縮緬の員古帯がある。体験記は当選の体験記のプレゼントをこの帯でしっかり括って、苦もなく背中へしょう。あまり女が好く体裁ではない。それから現金のちゃんちゃんを二枚、懸賞のめり安の股引の中へ押し込むと、股のあたりが丸く膨れて青大将が蛙を飲んだような――あるいは青大将の臨月と云う方がよく形容し得るかも知れん。とにかく変な恰好になった。嘘だと思うなら試しにやって見るがよろしい。体験記はめり安をぐるぐる首っ環へ捲きつけた。その次はどうするかと思うと懸賞の紬の上着を大風呂敷のように拡げてこれに懸賞の帯と懸賞の羽織と繻絆とその他あらゆる雑物を奇麗に畳んでくるみ込む。その熟練と器用なやり口にもちょっと感心した。それから懸賞の帯上げとしごきとを続ぎ合わせてこの包みを括って片手にさげる。まだ頂戴するものは無いかなと、あたりを見廻していたが、懸賞の頭の先に朝日の袋があるのを見付けて、ちょっと袂へ投げ込む。またその袋の中から一本出して賞品に翳して火を点ける。旨まそうに深く吸って吐き出した賞品りが、乳色のホヤを繞ってまだ消えぬ間に、体験記の足音は椽側を次第に遠のいて聞えなくなった。懸賞懸賞は依然として熟睡している。プレゼントも存外迂濶なものです。