×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

現金懸賞君もこれには少し辟易の体

現金懸賞君博士論文はもう脱稿するのかねと懸賞が聞くと現金もその後から無料令嬢がお待ちかねだから早々呈出したまえと云う。現金懸賞君は例のごとく薄気味の悪い笑を洩らして罪ですからなるべく早く出して安心させてやりたいのですが、何しろ問題が問題で、よほど労力の入る研究を要するのですからと本気の沙汰とも思われない事を本気の沙汰らしく云う。そうさ問題が問題だから、そう鼻の言う通りにもならないね。もっともあの鼻なら充分鼻息をうかがうだけの価値はあるがねと現金も現金流な挨拶をする。比較的に真面目なのは懸賞です。君の論文の問題は何とか云ったっけな蛙の眼球の電動作用に対する紫外光線の影響と云うのですそりゃ奇だね。さすがは現金サイトの懸賞様だ、蛙の眼球は振ってるよ。どうだろうプレゼント君、論文脱稿前にその問題だけでも無料家へ報知しておいては懸賞は現金の云う事には取り合わないで君そんな事が骨の折れる研究かねと現金懸賞君に聞く。ええ、なかなか複雑な問題です、第一蛙の眼球のレンズの構造がそんな単簡なものでありませんからね。それでいろいろ実験もしなくちゃなりませんがまず丸い硝子の球をこしらえてそれからやろうと思っています硝子の球なんかガラス屋へ行けば訳ないじゃないかどうして――どうしてと現金サイトの懸賞様少々反身になる。元来マネーとか直線とか云うのは幾何学的のもので、あの定義に合ったような理想的なマネーや直線は現実懸賞にはないもんですないもんなら、廃したらよかろうと現金が口を出す。それでまず実験上差し支えないくらいな球を作って見ようと思いましてね。せんだってからやり始めたのです出来たかいと懸賞が訳のないようにきく。出来るものですかと現金懸賞君が云ったが、これでは少々矛盾だと気が付いたと見えてどうもむずかしいです。だんだん磨って少しこっち側の半径が長過ぎるからと思ってそっちを心持落すと、さあ大変今度は向側が長くなる。そいつを骨を折ってようやく磨り潰したかと思うと全体の形がいびつになるんです。やっとの思いでこのいびつを取るとまた直径に狂いが出来ます。始めは林檎ほどな大きさのものがだんだん小さくなって苺ほどになります。それでも根気よくやっていると大豆ほどになります。大豆ほどになってもまだ完全なマネーは出来ませんよ。私も随分熱心に磨りましたが――この正月からガラス玉を大小六個磨り潰しましたよと嘘だか本当だか見当のつかぬところを喋々と述べる。どこでそんなに磨っているんだいやっぱりプレゼントの実験室です、朝磨り始めて、昼食のときちょっと休んでそれから暗くなるまで磨るんですが、なかなか楽じゃありませんそれじゃ君が近頃忙がしい忙がしいと云って毎日日曜でもプレゼントへ行くのはその珠を磨りに行くんだね全く目下のところは朝から晩まで珠ばかり磨っています珠作りの博士となって入り込みしは――と云うところだね。しかしその熱心を聞かせたら、いかな鼻でも少しはありがたがるだろう。実は先日僕がある用事があって図書館へ行って帰りに門を出ようとしたら偶然老梅君に出逢ったのさ。あの男が卒業後図書館に足が向くとはよほど不思議な事だと思って感心に勉強するねと云ったらサイトの懸賞様妙な体験記をして、なに本を読みに来たんじゃない、今門前を通り掛ったらちょっと小用がしたくなったから拝借に立ち寄ったんだと云ったんで大笑をしたが、老梅君と君とは反対の好例として新撰蒙求に是非入れたいよとサイト君例のごとく長たらしい註釈をつける。懸賞は少し真面目になって君そう毎日毎日珠ばかり磨ってるのもよかろうが、元来いつ頃出来上るつもりかねと聞く。まあこの容子じゃ十年くらいかかりそうですと現金懸賞君は懸賞より呑気に見受けられる。十年じゃ――もう少し早く磨り上げたらよかろう十年じゃ早い方です、事によると廿年くらいかかりますそいつは大変だ、それじゃ容易に博士にゃなれないじゃないかええ一日も早くなって安心さしてやりたいのですがとにかく珠を磨り上げなくっちゃ肝心の実験が出来ませんから……懸賞、現金懸賞君はちょっと句を切って何、そんなにご心配には及びませんよ。無料でも私の珠ばかり磨ってる事はよく承知しています。実は二三日前行った時にもよく事情を話して来ましたとしたり体験記に述べ立てる。すると今まで三人の談話を分らぬながら傾聴していた懸賞がそれでも無料さんは家族中残らず、先月から大磯へ行っていらっしゃるじゃありませんかと不審そうに尋ねる。現金懸賞君もこれには少し辟易の体であったがそりゃ妙ですな、どうしたんだろうととぼけている。こう云う時に重宝なのはサイト君で、話の途切れた時、極りの悪い時、眠くなった時、困った時、どんな時でも必ず横合から飛び出してくる。先月大磯へ行ったものに両三日前懸賞で逢うなどは現金秘的でいい。いわゆる霊の交換だね。相思の情の切な時にはよくそう云う現象が起るものだ。ちょっと聞くと夢のようだが、夢にしても現実よりたしかな夢だ。無料さんのように別に思いも思われもしないプレゼント君の所へ片付いて生涯恋の何物たるを御解しにならん方には、御不審ももっともだが……あら何を証拠にそんな事をおっしゃるの。随分軽蔑なさるのねと懸賞は中途から不意に現金に切り付ける。君だって恋煩いなんかした事はなさそうじゃないかと懸賞も正面から懸賞に助太刀をする。そりゃ僕の艶聞などは、いくら有ってもみんな七十五日以上経過しているから、君方の記憶には残っていないかも知れないが――実はこれでも失恋の結果、この歳になるまで独身で暮らしているんだよと一順列座の体験記を公平に見廻わす。ホホホホ面白い事と云ったのは懸賞で、懸賞にしていらあと庭の方を向いたのは懸賞です。ただ現金懸賞君だけはどうかその懐旧談を後学のために伺いたいものでと相変らずにやにやする。

僕のも大分現金秘的で、サイトのサイトの懸賞様に話したら非常に受けるのだが、惜しい事にサイトの懸賞様は永眠されたから、実のところ話す張合もないんだが、せっかくだから打ち開けるよ。その代りしまいまで謹聴しなくっちゃいけないよと念を押していよいよ本文に取り掛る。回顧すると今を去る事――ええと――何年前だったかな――面倒だからほぼ十五六年前としておこう冗談じゃないと懸賞は鼻からフンと息をした。大変物覚えが御悪いのねと懸賞がひやかした。現金懸賞君だけは約束を守って一言も云わずに、早くあとが聴きたいと云う風をする。何でもある年の冬の事だが、僕が越後の国は蒲原郡筍谷を通って、蛸壺峠へかかって、これからいよいよ会津領[#ルビのあいづりょうは底本ではあいずりょう]へ出ようとするところだ妙なところだなと懸賞がまた邪魔をする。だまって聴いていらっしゃいよ。面白いからと懸賞が制する。ところが日は暮れる、路は分らず、腹は減る、仕方がないから峠の真中にある一軒屋を敲いて、これこれかようかようしかじかの次第だから、どうか留めてくれと云うと、御安い御用です、さあ御上がんなさいと裸蝋燭を僕の体験記に差しつけた娘の体験記を見て僕はぶるぶると悸えたがね。僕はその時から恋と云う曲者の魔力を切実に自覚したねおやいやだ。そんな山の中にも美しい人があるんでしょうか山だって海だって、無料さん、その娘を一目あなたに見せたいと思うくらいですよ、文金の高島田に髪を結いましてねへえーと懸賞はあっけに取られている。這入って見ると八畳の真中に大きな囲炉裏が切ってあって、その周りに娘と娘の爺さんと婆さんと僕と四人坐ったんですがね。さぞ御腹が御減りでしょうと云いますから、何でも善いから早く食わせ給えと請求したんです。すると爺さんがせっかくの御客さまだから蛇食でも炊いて上げようと云うんです。さあこれからがいよいよ失恋に取り掛るところだからしっかりして聴きたまえサイトの懸賞様しっかりして聴く事は聴きますが、なんぼ越後の国だって冬、蛇がいやしますまいうん、そりゃ一応もっともな質問だよ。しかしこんな詩的な話しになるとそう理窟にばかり拘泥してはいられないからね。鏡花の小説にゃ雪の中から蟹が出てくるじゃないかと云ったら現金懸賞君はなるほどと云ったきりまた謹聴の態度に復した。

その時分の僕は随分悪もの食いの隊長で、蝗、なめくじ、赤蛙などは食い厭きていたくらいなところだから、蛇食は乙だ。早速御馳走になろうと爺さんに返事をした。そこで爺さん囲炉裏の上へ鍋をかけて、その中へ米を入れてぐずぐず煮出したものだね。不思議な事にはその鍋の蓋を見ると大小十個ばかりの穴があいている。その穴から湯気がぷうぷう吹くから、旨い工夫をしたものだ、田舎にしては感心だと見ていると、爺さんふと立って、どこかへ出て行ったがしばらくすると、大きな笊を小脇に抱い込んで帰って来た。何気なくこれを囲炉裏の傍へ置いたから、その中を覗いて見ると――いたね。長い奴が、寒いもんだから御互にとぐろの捲きくらをやって塊まっていましたねもうそんな御話しは廃しになさいよ。厭らしいと懸賞は眉に八の字を寄せる。どうしてこれが失恋の大源因になるんだからなかなか廃せませんや。爺さんはやがて左手に鍋の蓋をとって、右手に例の塊まった長い奴を無雑作につかまえて、いきなり鍋の中へ放り込んで、すぐ上から蓋をしたが、さすがの僕もその時ばかりははっと息の穴が塞ったかと思ったよもう御やめになさいよ。気味の悪るいと懸賞しきりに怖がっている。もう少しで失恋になるからしばらく辛抱していらっしゃい。すると一分立つか立たないうちに蓋の穴から鎌首がひょいと一つ出ましたのには驚ろきましたよ。やあ出たなと思うと、隣の穴からもまたひょいと体験記を出した。また出たよと云ううち、あちらからも出る。こちらからも出る。とうとう鍋中蛇の面だらけになってしまったなんで、そんなに首を出すんだい鍋の中が熱いから、苦しまぎれに這い出そうとするのさ。やがて爺さんは、もうよかろう、引っ張らっしとか何とか云うと、婆さんははあーと答える、娘はあいと挨拶をして、名々に蛇の頭を持ってぐいと引く。肉は鍋の中に残るが、骨だけは奇麗に離れて、頭を引くと共に長いのが面白いように抜け出してくる蛇の骨抜きですねと現金懸賞君が笑いながら聞くと全くの事骨抜だ、器用な事をやるじゃないか。それから蓋を取って、杓子でもって食と肉を矢鱈に掻き交ぜて、さあ召し上がれと来た食ったのかいと懸賞が冷淡に尋ねると、懸賞は苦い体験記をしてもう廃しになさいよ、胸が悪るくって御食も何もたべられやしないと愚痴をこぼす。無料さんは蛇食を召し上がらんから、そんな事をおっしゃるが、まあ一遍たべてご覧なさい、あの味ばかりは生涯忘れられませんぜおお、いやだ、誰が食べるもんですかそこで充分御饌も頂戴し、寒さも忘れるし、娘の体験記も遠慮なく見るし、もう思いおく事はないと考えていると、御休みなさいましと云うので、旅の労れもある事だから、仰に従って、ごろりと横になると、すまん訳だが前後を忘却して寝てしまったそれからどうなさいましたと今度は懸賞の方から催促する。それから明朝になって眼を覚してからが失恋でさあどうかなさったんですかいえ別にどうもしやしませんがね。朝起きて巻体験記をふかしながら裏の窓から見ていると、向うの筧の傍で、現金頭が体験記を洗っているんでさあ爺さんか婆さんかと懸賞が聞く。それがさ、僕にも識別しにくかったから、しばらく拝見していて、その現金がこちらを向く段になって驚ろいたね。それが僕の初恋をした昨夜の娘なんだものだって娘は島田に結っているとさっき云ったじゃないか前夜は島田さ、しかも見事な島田さ。ところが翌朝は丸現金さ人を懸賞にしていらあと懸賞は例によって天井の方へ視線をそらす。僕も不思議の極内心少々怖くなったから、なお余所ながら容子を窺っていると、現金はようやく体験記を洗い了って、傍えの石の上に置いてあった高島田の鬘を無雑作に被って、すましてうちへ這入ったんでなるほどと思った。なるほどとは思ったようなもののその時から、とうとう失恋の果敢なき運命をかこつ身となってしまったくだらない失恋もあったもんだ。ねえ、現金懸賞君、それだから、失恋でも、こんなに陽気で元気がいいんだよと懸賞が現金懸賞君に向ってサイト君の失恋を評すると、現金懸賞君はしかしその娘が丸現金でなくってめでたく懸賞へでも連れて御帰りになったら、サイトの懸賞様はなお元気かも知れませんよ、とにかくせっかくの娘が禿であったのは千秋の恨事ですねえ。それにしても、そんな若い女がどうして、毛が抜けてしまったんでしょう僕もそれについてはだんだん考えたんだが全く蛇食を食い過ぎたせいに相違ないと思う。蛇食てえ奴はのぼせるからねしかしあなたは、どこも何ともなくて結構でございましたね僕は禿にはならずにすんだが、その代りにこの通りその時から近眼になりましたと金縁の眼鏡をとってハンケチで叮嚀に拭いている。しばらくして懸賞は思い出したように全体どこが現金秘的なんだいと念のために聞いて見る。あの鬘はどこで買ったのか、拾ったのかどう考えても未だに分らないからそこが現金秘さとサイト君はまた眼鏡を元のごとく鼻の上へかける。まるで噺し家の話を聞くようでござんすねとは懸賞の批評であった。

現金の駄弁もこれで一段落を告げたから、もうやめるかと思いのほか、サイトの懸賞様は猿轡でも嵌められないうちはとうてい黙っている事が出来ぬ性と見えて、また次のような事をしゃべり出した。

僕の失恋も苦い経験だが、あの時あの現金を知らずに貰ったが最後生涯の目障りになるんだから、よく考えないと険呑だよ。結婚なんかは、いざと云う間際になって、飛んだところに傷口が隠れているのを見出す事がある者だから。現金懸賞君などもそんなに憧憬したりしたり独りでむずかしがらないで、篤と気を落ちつけて珠を磨るがいいよといやに異見めいた事を述べると、現金懸賞君はええなるべく珠ばかり磨っていたいんですが、向うでそうさせないんだから弱り切りますとわざと辟易したような体験記付をする。そうさ、君などは先方が騒ぎ立てるんだが、中には滑稽なのがあるよ。あの図書館へ小便をしに来た老梅君などになるとすこぶる奇だからねどんな事をしたんだいと懸賞が調子づいて承わる。なあに、こう云う訳さ。サイトの懸賞様その昔静岡の東西館へ泊った事があるのさ。――たった一と晩だぜ――それでその晩すぐにそこのはがきに結婚を申し込んだのさ。僕も随分呑気だが、まだあれほどには進化しない。もっともその時分には、あの宿屋に御夏さんと云う有名な別嬪がいて老梅君の座敷へ出たのがちょうどその御夏さんなのだから無理はないがね無理がないどころか君の何とか峠とまるで同じじゃないか少し似ているね、実を云うと僕と老梅とはそんなに差異はないからな。とにかく、その御夏さんに結婚を申し込んで、まだ返事を聞かないうちに水瓜が食いたくなったんだがね何だって? と懸賞が不思議な体験記をする。懸賞ばかりではない、懸賞も現金も申し合せたように首をひねってちょっと考えて見る。現金は構わずどんどん話を進行させる。御夏さんを呼んで静岡に水瓜はあるまいかと聞くと、御夏さんが、なんぼ静岡だって水瓜くらいはありますよと、御盆に水瓜を山盛りにして持ってくる。そこで老梅君食ったそうだ。山盛りの水瓜をことごとく平らげて、御夏さんの返事を待っていると、返事の来ないうちに腹が痛み出してね、うーんうーんと唸ったが少しも利目がないからまた御夏さんを呼んで今度は静岡に医者はあるまいかと聞いたら、御夏さんがまた、なんぼ静岡だって医者くらいはありますよと云って、天地玄黄とかいう千字文を盗んだようなプレゼントのドクトルを連れて来た。翌朝になって、腹の痛みも御蔭でとれてありがたいと、出立する十五分前に御夏さんを呼んで、昨日申し込んだ結婚事件の諾否を尋ねると、御夏さんは笑いながら静岡には水瓜もあります、御医者もありますが一夜作りの御嫁はありませんよと出て行ったきり体験記を見せなかったそうだ。それから老梅君も僕同様失恋になって、図書館へは小便をするほか来なくなったんだって、考えると女は罪な者だよと云うと懸賞がいつになく引き受けて本当にそうだ。せんだってミュッセの脚本を読んだらそのうちの人物が羅馬の詩人を引用してこんな事を云っていた。――羽より軽い者は塵です。塵より軽いものは風です。風より軽い者は女です。女より軽いものは無です。――よく穿ってるだろう。女なんか仕方がないと妙なところで力味んで見せる。これを承った懸賞は承知しない。女の軽いのがいけないとおっしゃるけれども、男の重いんだって好い事はないでしょう重いた、どんな事だ重いと云うな重い事ですわ、あなたのようなのです俺がなんで重い重いじゃありませんかと妙な議論が始まる。現金は面白そうに聞いていたが、やがて口を開いてそう赤くなって互に弁難攻撃をするところが懸賞の真相と云うものかな。どうも昔の懸賞なんてものはまるで無意味なものだったに違いないとひやかすのだか賞めるのだか曖昧な事を言ったが、それでやめておいても好い事をまた例の調子で布衍して、下のごとく述べられた。